清潔感と処女
私たちの業界では、容姿が良いことはもちろんですが、それだけじゃないのよね。
見た目良くても中身がスッカラカンであればすぐ他に乗り換えられるし、かといって中身ダケでも意味がないの。多少の好感が持てるような見た目が大事。
ではまずどうするか。
どんな人でも最初は見た目からだし、好き嫌いもあるのだけど。
圧倒的な清潔感。
これがあれば大抵は話だけでもして頂ける。
ある日、中学校からの友人から相談があると言われ、西麻布にある焼肉屋さんへ。
向こうは某大手お菓子メーカーの営業ウーマン。
仕事がどうにも上手くいかないらしい。
一体何がダメなのか自分じゃもう分からないから、教えて欲しいとのこと。
その話をした時は冬だったんだけどね。
彼女はその日スーツで来ていて、上着を脱いでいたんだけど、
袖から見えるのは華奢な手首にブレスレットではなくうっすら毛の生えたかさかさの手首と白いシャツの下のヒートテック。
髪の毛は生え際が黒くなっていて、ヘアゴムでひとつに結んでいる。
ヘアピンは明るい茶色の髪に真っ黒なもの。
生活感の漂う後れ毛。
真ん中だけ抜いてるボサボサ眉毛に、引いてんだか引いてないんだかのアイライン。
左右非対称のアイシャドウ。チークはなし。
暗い表情に、語尾を伸ばして話す話し方に、目を合わせない。
そして極め付けは首を振って喋る、猫背。
もうお前なめてんのかと。
少なくとも女性の営業って、明るさと愛嬌が最初のとっかかりになるってもんで。
女性の営業を欲しがる経営者の方は、大抵の方がこう言います。
愛嬌のある子、明るい子、可愛い子。
可愛いっていうのは個人の主観も入ってくるし、生まれた自分の容姿はある程度努力しても限界がある。
でも、誰もが身に付けられるのが清潔感。
頭ボサボサの金髪プリンのボソボソ話す可愛い子より、黒髪の清潔感のあるニコニコした明るい普通の子の方が、おじ様たちは好きです。
彼女にはオブラートに包まずその旨を伝えました。
すると彼女(今更ながらAちゃんとします)から返ってきたのは、
A:結局、見た目じゃん!!!(怒)
S:え、何言ってんのそうだよ。
A:え…?
S:え?
S:あのね、人は見た目だけじゃないなんてよく言いますが、
見た目がほとんど最初の印象を決めるんだよね。
S:分厚い皮のオレンジで、中身一緒で、片方傷だらけ、
もう片方は綺麗で値段も一緒だったらあんたどっち買うの?
A:…綺麗な方…
S:そこに何万、何十万、何百万払うとしたら?
好きな方試食していいよって言われたら?
A:……綺麗な方
S:それはどうして?
A:安心する。
S:別にね。あんたを言い負かしたいわけじゃなくてね。
ただ 、安心できるものを、人は求めるんだよね。
傷だらけのオレンジは言い過ぎだけど、あんたの答えの中にあるのは
見た目に左右されるってこと。どんなに顔が可愛くても、とっかかりがなきゃ。
どんなに可愛くなくても、顔は変えられなくても、清潔感。
形は良くなくても、傷なしでつやつやしてたら手に取ってもらえる機会は増えるってこと。
A:うん。
S:可愛いだけで仕事は取れない。可愛くないならもっと取れない。
顔の話じゃなくて、人間性の話ね。
女は愛嬌。その愛嬌を見てもらうには、最低限の清潔感。
A:ヘイ
S:とりあえず、今日はうちに泊まること。
あとは明日使えるお金いくらある?なけりゃ貸す。信じて預けろ・
納得出来なきゃ全額払う。
A:2万くらい…
S:4万だ。2万貸す。
A:ヘイ
そこからは、Aちゃんの上司への愚痴をひたすら聞いて、手に持っていたビールが赤ワインに変わって、イケメンおじさんがうじゃうじゃ居るバルでトイレにこもったAちゃんを担いで帰宅。